Ynikiの備忘録

日々の勉強のまとめを不定期に書いていきます

呼吸数測定は重要なのに,なぜ軽視されるのか?

呼吸数は,測定の不正確性や煩雑さから省略されやすいバイタルサインの1つといえるが,その臨床上の重要性は, 呼吸不全のみならず近年注目されており,必ず測定するようにしたい.

呼吸数の正常値は一般的には 12~20/min といわれ,それ以上を「頻呼吸」,8/min 以下を「徐呼吸」とよぶが,意外にも国際的に一致した"定義は"ない.

循環不全では血圧が下がる前に脈拍が上がるように,呼吸不全では SpO2が低下する前に呼吸数が増加する。分時換気量を増やし PaCO2を低下させることで, 肺胞内の酸素分圧を上昇させる合理的な反応といえる.

そして呼吸数は,呼吸不全だけではなく種々の

侵襲への反応として早期に変化し, その異常は肺炎の発症,院内死亡 [6/min 以下でオッズ比 (OR)14.4. 30/min 以上で OR 7.2] や院内心肺停止発生(27/min 以上で OR 5.56) の独立したリスク因子として、複数の報告がある.

疾患特異的なスコアリングとして肺炎に対する CURB-65やPSI, 敗血症のスクリーニングに使用するqSOFA** などにも,呼吸数の異常は含まれている.

特に,院内急変を未然に防ぐRRS (rapid

response system)の分野での起動トリガー

(EWS)としても,近年注目されており, 多く

の種類の EWS において呼吸数の異常は重要な項目とされている.

不随意呼吸は延髄の呼吸中枢が調節し,随意呼

吸は大脳皮質が調節している。延髄の呼吸中枢は,頸動脈小体などにある化学受容体で血液の pH,PaO2, PaCO2をモニタリングし, pH の低下やPaO2 の低下, PaCO2 の上昇を認めた場合には呼吸中枢ヘフィードバックを行い, 呼吸数や1回換気量を増やして代償する。これが, 呼吸不全患者にみられる頻呼吸や, 1回換気量を増やすため呼吸補助筋まで使用して行う努力呼吸の本態である。

しかし,大脳で随意呼吸は調節できるため, 呼吸不全とは関係なく患者の意思によって変化する可能性もあり,正確な測定は難しいことがある。