最新研究が示した、驚きの結末とは
心停止におけるアドレナリンの使用は、現在のガイドラインでも標準的な対応として位置づけられています。特に心室細動や無脈性心室頻拍といった「ショック可能リズム」に対しても、除細動とともにアドレナリンが用いられてきました。
しかし、この“常識”に警鐘を鳴らす新たな研究が発表されました。
パリ大規模レジストリで明らかになった衝撃のデータ
2025年6月にCritical Care誌に掲載された研究では、2011〜2021年のパリおよび近郊(約700万人規模)で記録された**院外心停止データ(3163例)を解析。対象は3回以上の除細動にも反応しなかった「難治性ショック可能リズム」**の症例に限定されました。
研究では、傾向スコアマッチングやIPTW(逆確率重み付け)といった手法を用いて、可能な限りバイアスを除去しています。
結果:アドレナリンが神経学的予後を悪化?
アドレナリン使用率:81%(2572例)
良好な神経学的転帰(CPC1または2):
アドレナリン使用群:11%
非使用群:50%
アドレナリン使用と良好転帰との関連(aOR):
0.24(95%CI: 0.19–0.31)→強い負の相関
5mg以上使用した群ではさらに不良(aOR=0.13)
つまり、アドレナリンを使用した群では、良好な神経学的転帰の割合が著しく低かったのです。
なぜこのような結果になるのか?
アドレナリンは一時的にROSC(自己心拍再開)率を向上させる一方で、脳の微小循環障害や心筋の酸素消費増加、不整脈の誘発といった**「その後の転帰を悪化させる作用」**が懸念されます。
この傾向は、以前に発表されたPARAMEDIC-2試験でも指摘されており、「ROSC率は上がるが、神経学的予後は改善しない」ことが示されています。今回の研究はこれをさらに補強する形となりました。
今後の課題:ガイドラインの見直しと代替戦略
今回の結果からは、難治性心室細動においてアドレナリンを漫然と使用することのリスクが浮き彫りとなりました。
今後は、ガイドラインの見直しも含め、より慎重な使用判断が求められるかもしれません。代替治療としては、ECPR(体外循環式心肺蘇生)や他の薬剤の可能性も今後注目されるべき領域です。
最後に
日々の現場でアドレナリンを投与する私たちにとって、この研究は衝撃的な内容かもしれません。しかし、科学的知見は常に進化し続けています。
「目の前の患者に本当に有益なのか?」
この視点を持ちながら、今後の蘇生戦略を見直すことが求められています。